郊外に建つ、築30年の戸建住宅の、
水周りを中心とする1階北側空間のリノベーション。
1階の北側に水周りを集中させている住宅は、とても一般的です。
しかし、北側の柔らかな光を生かし、
また風通しを考慮した空間とは言い難い。
この住宅もまた、
浴室、洗面室、トイレ、ダイニングキッチン、廊下と、
個々の部屋がドアと壁によって囲まれ、
「暗」く、「湿気」ている印象がありました。
しかし、既存のプランを読み進めると、
北側の外壁には、小さいながらも窓が多く、
更に郊外の住宅地らしく、隣地との距離も
適度に確保されていることが分かりました。
洗面側の空間と、キッチンダイニング側の空間を
ひと連なりにするために、
間に設置されていたトイレを、
あえて少し外壁から放し、
光と風が、間に巡るようにしました。
ひとつの大きな空間の中にある、
という捉え方をしたかったのです。
北側の柔らかな光を拡散するため、
壁は「白」を基調としています。
周りの住宅の庭木の緑が、
爽やかな風とともに窓からのぞき、
白の空間と対比します。
郊外の住宅の良さは、
この緩やかさにある。
そんな印象を持ちました。
既存の枠や壁の質感の上に新しい塗装を重ね、
ところによっては残し、
どこか懐かしさを感じる空間になりました。
新築では出せない、時の作り出すデザインです。
古さを生かすことの楽しさに
夢中になった物件になりました。